イエス・キリスト=スーパースターのパンフレット

「新作のロックオペラに、果たして出演できるのか?」

ー Backstage Graffiti ー

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『アプローズ』 公開の翌年の昭和48年。 

歌舞伎風メイク、邦楽器でのアレンジ、大八車が行き交う演出の『イエス・キリスト=スーパースター』の誕生です。 

当時は日本語読みで『イエス・キリスト=スーパースター』。あとから『江戸版』とも呼ばれた、現在の『ジーザス・クライスト=スーパースター』ですね。 

  

おみつはここでもオーディション。 

「劇団四季の新作に果たして出演できるのか?」 

  

新作は「日本を舞台にしたロックオペラというらしい!」との情報を耳にしたおみつは 

腰に日本手拭いをぶら下げてオーディションに向かいました。 

 

課題曲は、ユダの『彼らの心は天国に』。 

  

後から聞いたのですが、腰に日本手拭いをぶら下げて歌う『彼らの心は天国に』は、オーディション参加者の中でも相当目立っていたそうです。そして同じくらいおかしくて、かなり話題になったと、笑い話として聞きました。 

  

『アプローズ』と違って、ロック系のシンガーと思われる、原色の衣装が、オーディション会場でやたらと目立っていました。それがまた自信あり気にも見えて、いつもの会場では見られないような異様な雰囲気に包まれていたこと。そしておみつは集中力を保つのに苦労したことをよく覚えています。 

 

オーディションの結果は 

イエス・キリスト 鹿賀丈史 さん 

イスカリオテのユダ 飯野おさみ さん 

マグダラのマリア 島田祐子 さん 

ヘロデ王 市村正親 さん 

 

今から50年以上前のことなので、若いエネルギーが満ち溢れんばかりの面々といった感じだったと思います。 

  

そしておみつはというと、イエス・キリストを敵視するユダヤ教教団の司祭3を仰せ使い、ようやく劇団四季の舞台にたどり着きました。 

 

この作品をきっかけに、イエス・キリストを1人の人間としてみる『ジーザスムーブメント』が世界中で起こり、劇団四季という未知の世界、ロックオペラへの挑戦。さらには、公演委員長に任命されていたこともあって責任や緊張、課題、困難、挑戦だらけだったこれらの日々は、おみつにとって忘れられないものとなりました。 

 

昨年、惜しまれつつ物故されたもんたよしのりさんは大祭司の義父アンナス役でした。 

『ジーザスは死ぬべし』という物騒なナンバーを、独特のハイトーン&ロックのリズムでリードされ、稽古から本番まで歌い尽くしていらっしゃったことをはっきりと思い出すことができます。 

もちろん選ばれた全員が何度も、何度も歌い込んで、声をガラガラにしながらの稽古。 

ミュージカルはもちろん、オペラやロック畑の人も交えて、いろんな演者が入り乱れてそれぞれの個性を発揮して競い合っていた2,3ヶ月でした。 

 

 そして迎えた1973年6月19日。 

以降、今も再演を続けている『ジーザス・クライスト=スーパースター』が誕生したのです。 

中野サンプラザホールの新装こけら落とし公演として、初日の幕が開きました。